toggle
2016-03-19

介護の現場に役立つIT技術 木更津高専×木更津福祉事業|介護のみらい

mohi

「猫の手も借りたい!」
そんな声があちこちから聞こえてくる介護業界。低賃金や重労働などの理由から離職率が上がり、慢性的な人材不足に陥っている現状です。この悪循環をなくすことが急務であるとともに、世界でも類をみない《超高齢化社会》という問題が待ち受けている今、地域全体として、また様々な分野からの福祉・介護への支援がますます重要になるのではないでしょうか。
 
ママヘルパー×理系男子対談から始まった介護支援アプリ開発
介護の世界は典型的なアナログの世界。それは人が人に対して行うサービスなので、むしろ〝アナログな感覚〟の方が大切なのかもしれません。しかし、事務的な作業の部分に関してITなどのデジタル技術を取り入れることで、時間短縮や作業量の軽減などに繋がらないだろうか。2015年夏、そんな発想から木更津工業高等専門学校の学生たちと子育てしながら働くママヘルパーとの対談を企画しました。
 
gakusei
対談に参加してくれた学生は、左から木更津高専 専攻科の2年 根本明さん、2年 君塚進さん、1年 福原直也さんの3人。対談のあと内容をそれぞれ持ち帰り、介護に関して地域に貢献できることを考えレポートにまとめていただきました。
(現在開発途中のためレポートおよび研究の詳細については掲載できませんが、商品化の暁にはヘルパーキャラバンで公開してまいります!)
この春、根本さんは東京大学大学院情報理工学系研究科に、君塚さんは東京電気通信大学大学院情報理工学研究科にそれぞれ進学します。木更津から巣立っていく若き才能の活躍を期待しています。
 
そして、この対談がきっかけとなり木更津高専の大枝准教授の協力のもと、介護日誌を電子化するアプリの研究開発が始まりました。専門分野の研究が実現の鍵を握る大枝准教授に、今回のアプリ開発について伺いました。
 

【 大枝真一 准教授 】
1976年生。東京都立科学技術大学大学院工学研究科インテリジェントシステム専攻 博士課程修了。
2011年4月木更津高専准教授。知能情報システム・数理情報学・教育データマイニングなどが専門。

ー工学の研究に入るきっかけは?
大枝:宇宙探査に憧れて、ロケットを作るのが夢でした。高校2年のときに私の生まれ育った山口県萩市で、宇宙飛行士の毛利衛さんの講演を聞いたことがきっかけです。その後、月や火星など衛星の地上を探査するロボットを作りたいという夢になりました。 そして、〝いろいろ〟あって教員となり知能情報システムの研究を行っています。
 
ー現在、目指していることや夢は?
大枝:自ら思考する機械を作りたいです! いわゆる人工知能です。私が大学3年、21歳の頃からの夢ですね。現在、人工知能の研究が進み、人の顔や声を機械によって認識できる時代となりました。一方で、人間だと簡単にできることでも、まだまだ難しいこともたくさんあります。人工知能の研究に携わると、逆に人間の能力ってすごいなと改めて感心することが多いんです。人工知能を実際に作るという観点から、脳科学解明へのアプローチができればすごいと考えています。また、人工知能は人の仕事を奪うのではないかという懸念もあります。しかし、私は人の社会が豊かになるような研究をしたいと考えています。
 
ー今回のアプリの研究開発の依頼を受けたとき、どう思われましたか?
大枝:ここは学校なので、実際にアプリという商品を創り上げていくのは大変なことになるだろうな、というのが直感でした。 というのは、研究として進めていく事と実際にそれを広めていく事とは、だいぶ違うことになると感じていましたので。
 
ーディープラーニングというものが「きたぞ」とお話されていましたが。
大枝:ディープラーニング(※)の基礎となるニューラルネットワークの研究は、私が大学4年からずっと続けてはいたのですが、 その後、ほかの研究手法が出てきたのでなかなか日の目を見ない時代もあったんです。 ですが、最近になって飛躍的に使われるようになり、手書き文字認識の画像処理部分とのマッチングが非常に良く「これはいけるかもしれない!」と感じたんです。
※ディープラーニング(深層学習)
人間の脳を模倣することで新しい情報処理モデルを構築しようというニューラルネットワークの機械学習の事。汎用的な人工知能の実現が期待されている。
 
ー木更津市内の約3万人の高齢者の方々が、ホームドクターや大きな病院と連動する規模においての商品化はいかがでしょうか?
大枝:そうですね、いわゆる自社生産のような形で、ある程度小さいコミュニティーであれば創っていくことは出来るかと思います。もっと大きな規模で販路を作っていくのは大変だと思いますが。まずは一施設内とか木更津市内とかで展開してみて、それを足掛かりにして全国展開とか大きい規模に対してもチャレンジできればと思います。
 
ーデータ管理や収集・集計などを行う学生によるベンチャー企業について
大枝:実際にモノを創って商品化すると、どうしても細かい作業が発生すると思います。それは時間がかかる反面、なかなか研究になりにくいという面があります。 一方、非常に優秀な学生たちの技術が眠っているような状態なので、そこをマッチングさせてスキルを持った学生にしか出来ない作業をしてもらい、独立して研究開発を進めるという形での〝高専生が立ち上げるベンチャー企業〟というものになれば非常に面白いと思います。今回のアプリ開発に限らず、ぜひ木更津高専からそういった発信ができていけれないいなと思っています。
学生ベンチャー企業もそうですが、木更津をシリコンバレーにみたいにしたいと思っていまして。木更津は東京からもアクアラインを使えばすぐなので、非常に立地条件が良く土地も安いので、開発できる場所もたくさんあります。そうなれば、地域に根付いた就職活動ができると思うんです。全国から集まった優秀な頭脳を、この木更津でもっと花を開かせていきたいですね。
 
ー最後にヘルパーキャラバンならではの質問です。先生が高齢者になって欲しいものは?
大枝:いろいろ考えたのですが、義足です。それが完全なるバリアフリーです。
ところで、人間の足は考えなくても自然に動かすことができます。義足の場合でも、人の意図を汲みとって動かしたいように動かす必要があります。この機能として半自律動作させる制御部分を人工知能によって構築できると面白いと思います。
 
さすがは工学博士ならではの回答に敬服です。まだまだ研究は始まったばかりですが、介護というものに関して全く興味のなかった学生たちが関心を持ち、自分たちの研究を活かして地域に貢献することが出来たならば、将来的にも必ず実りのあるものになることでしょう。
 
kenkyu02
 
「特化した高専」を目指し、地(知)の拠点大学による地方創生を
研究開発の協力をいただいている、木更津工業高等専門学校の前野一夫学校長からもコメントをいただきした。
「国立高専は、伝統的な旧制高等工芸学校等の理念に基づき、昭和40年前後に設立された高等教育機関です。最近は中等教育機関である公私立高等学校と混同・誤解されやすいのですが、教授・准教授以下、博士60名以上を有する高等教育機関です。人材育成と共に、国際交流・産学連携や研究開発も極めて活発です。現在COC+(地域創生Project)の参加大学の一員で、千葉県の「知の拠点」として活動を開始しています。情報工学、土木や環境、機械電子・ロボティクスなど先端科学技術と、セキュリティ・高齢化社会や農林水産業との接点に特徴を有し、地域発展と人材教育に大きく貢献しています。」
 
産学官連携による新しいシステム作り
「福祉」というものの経済規模を大きく活性化させることで、“税金を消費するだけの産業”ではなく“生産できる産業”にしていくために、木更津市の商工会議所内に「福祉部」が立ち上がろうとしています。福祉関係者の横の連携を強化するとともに、地域の方々との互恵関係を構築していくことを目指しています。
今回のような、民間(産)と学術機関(学)と行政(官)とが各々特性を活かしながら連携し、新しい取り組みをしていくことでより良い地域づくりに貢献していけるのではないでしょうか。

関連記事

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です