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2016-03-17

対物から対人へ 薬剤師の新たな可能性|経営者にきくvol.4【エンゼル薬局/木更津】

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清々しい朝の日差しに真っ白な制服が映え、爽やかな笑顔で出迎えてくれた齋藤さん。「薬というものは大半が口に入るものなので清潔感に気をつけています」と言うその穏やかな物腰と素敵な蝶ネクタイはまるで英国紳士のようです。
齋藤さんが代表を務めるこの「エンゼル薬局」は産婦人科・小児科などが専門の加藤病院の前ということもあり、店内は女性が落ち着ける雰囲気。木の温もりが感じられる商品棚やお薬の相談ブースはなんと齋藤さんのお手製だそうです。

LINE登録で「待ち時間ゼロ」、薬の配達や在宅も開始
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具合が悪くて受診したのに病院で長時間待たされ、おまけに薬局でも・・・。こんな時に助かるLINEを使った「待ち時間ゼロ」のサービスを、この地域ではいち早く導入しています。
手順は、エンゼル薬局のLINEアカウントを追加して友達登録→処方箋の全体が映るように携帯カメラで撮影→写真をLINEに添付→「お薬が用意できました」との連絡がLINEに入ります。
LINEをはじめ電話やFAXでも全医療機関の処方箋を受け付け、高齢者の一人暮らしや要介護で来局できない方、悪天候の時やドリンク剤など重い薬を購入した時など薬の配達もしてくださいます。(※木更津市近隣に限ります)

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また、先述の相談ブースは受付・会計カウンターの隣に設けられているので、なかなか病院では話すことのできない不安や悩みなどをじっくりと相談できるスペースになっています。エンゼル薬局でこのようなサービスを始めるに至ったのは、齋藤さんの次のような想いからでした。

“対物”から“対人”へ 薬剤師の仕事の可能性を拡大
「一般的に、薬局は“病院から出された処方箋を持ってきて薬をもらうところ”、薬剤師は “処方箋のレシピ通りに素早く正確に調剤する”というイメージが大半だと思われます。しかし、これからはまるで自動販売機のように薬を扱うだけの“対物”の仕事から、 薬をもらいに来た方の顔色も見て対応する“対人”の仕事へと変わっていかなくてはならないと思うんです」 と話す齋藤さん。

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時間が限られている病院の診察だけでは、なかなか拾えない情報があります。また「遠慮してしまって病院では言えなかったけれど実はこうした症状もある」など、 どんな些細なことでも気になったら薬局で言って欲しいといいます。たとえば「入れ歯が浮いてしまった」→「血圧が関係している」→「薬の副作用が出ているのでは?」 という予測が立ち、診断はできないけれど薬学的見地からアドバイスができるそうです。

さらに、政府が推進しているという“セルフメディケーション”。「自分自身の健康に責任を持ち、軽度な身体の不調は自分で手当てすること」と世界保健機関(WHO)で定義されていますが、つまりは病院での受診が必要なのか必要ないのかを自分自身で判断していくということになります。そのような判断に困ったときなども、ぜひ薬局で相談していただきたいとのことでした。

未曾有の超高齢者社会に向けた「在宅診療」の重要性
人口の多い団塊世代が一斉に後期高齢者となる“2025年問題”が迫るなか、「在宅診療」の重要性が注目されています。 国の医療改革計画においても在宅診療分野に大きな報酬を設定し強化していく方向にともない、薬剤師の仕事は拡大しつつあると齋藤さんは言います。

「在宅診療は“チーム医療”の一つの形だと言えます。医師や看護師はもとより、 薬剤師や栄養士などがそれぞれの専門分野の能力を活かし連携することで、 在宅でも病院に劣らぬ質の高い治療やケアを提供できるのではないでしょうか」
しかし、在宅診療に関わる人たちの間で連携が取れていないのが現状だといいます。高齢者に寄り添い一番近くにいるケアマネージャーの持っている情報が、医療側まで伝わっていないというケースも多々あるそうです。そこに薬剤師が橋渡し役として入ることで連携がスムーズになるのではないかと。

また、一人暮らしの高齢者の方が薬を「飲めていない」または「多く飲んでしまっている」など、正確に飲めていない場合が多いということを現場に出て初めて認識したそうです。そこで、今後は薬剤師という立場を「在宅診療」の現場にどんどん投入していきたい、と話す齋藤さん。
「今まで薬剤師は、薬を出すだけできちんと飲めているだろうと思っていた。お薬を出して終わりだったんです。でもこれからは、実際に飲めていますか? というところまでケアできる“人間力”が必要になってくると思います。」

若・中年層にも大事な薬の知識と、薬剤師の役割の“革新”
薬のことでよく聞かれるのが、出された薬は全て飲みきらなくてはならないのかという質問。
「解熱剤や鎮痛剤などは症状に合わせて止めても良いのですが、抗生物質などはウイルスに耐性が出来てしまうので、きちんと出された薬を飲み切ってくださいね」とのことでした。
「基本的な医学・薬学的知識の学習は、特に母親になる予備軍である女性にとっては必要なことなので、義務教育の中にも入れていったらよいのでは?」といった話にも深く共感してくださいました。

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昨年、薬剤師の可能性を拡げるべく「とみざわ薬局」の冨沢道俊さんが会長、齋藤さんが副会長となり「PIG(ファーマシスト イノベーション グループ)」という団体を昨年発足させました。高校時代からの付き合いであるお二人が、それぞれ違う薬科大に進学したのち地元に戻り、薬剤師会で顔を合わせるようになったそうです。さらに、ほかの薬剤師や介護関係者も交えた勉強会として集まるようになり「PIG」の発足に至ったといいます。
「みな、自分の職種だけ一生懸命やってればいいというところに限界を感じている中、何かを変えていきたいという想いが強かったんです。」
薬剤師としてもこの地域での旗振り役として前に立ち、ビジネスとしても整備していきたいと語る齋藤さん。「PIG」を含めたこれからの活動にも注目していきます。

【お問い合わせ】エンゼル薬局
千葉県木更津市高柳1-6-30 TEL:0438-40-1933
営業時間:月・水8:30~19:00 木〜金8:30~18:00
日曜8:30~13:00(火曜・祝日休)

【齋藤 武さん プロフィール】
1978年生まれ。帝京大学薬学部卒。
株式会社エンゼル薬局 代表取締役 管理薬剤師
H28年4月 君津木更津薬剤師会 理事
〔所属学会〕
全国薬剤師・在宅療養支援連絡会(J-HOP)、日本在宅薬学会

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