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2015-09-07

守っていくこと、変えていくこと。
今こそ、世代を超えて支えあう地域へ|介護の未来

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法律・教育・福祉に携わっている方々から、介護の課題を各々の視点から語る企画。
異業種の方々との意見交換により生まれる、新しい視点を探っていきたいと思います。

今回は、地域で活躍する法律の専門家・地域ボランティアも支援する大学職員・地域で愛されるお寺の女性住職といった、地域コミュニティのリーダー達にお話を伺いました。

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司法書士/平野政則
千葉県木更津市出身、昭和22年生まれ。早稲田大学 哲学学科 出身。平成20年~23年 全国公共属宅登記 司法書士協会協議会 会長を務める(現名誉会長)。地域の福祉施設も多く顧問先として抱え、日々介護に係る問題点と向き合う。多忙の中で木更津商工会議所会員向けの無料相談も行う、地域密着の情熱派司法書士。趣味は、落語・観劇(宝塚歌劇団、歌舞伎 等)。

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真言宗豊山派新御堂寺 住職 藤平 貞順
千葉県木更津市出身、1979年生まれ。新御堂寺に隣接する魚屋で生まれた。幼い頃から寺は遊び場だったことから関心を持ち、高野山大で社会福祉学を専攻。10年前、後継ぎがいなかった先代に誘われ、家族が心配する中「やってみなくては分からない」と住職に。御詠歌や写経、ラジオ体操、盆踊りなどを始め、地域社会の中でお寺の可能性を広げている。

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東京情報大学 入試・広報課/近本 百可
千葉県出身、1984年生まれ。2008年に東京情報大学を卒業後、学校法人東京農業大学に事務職員として採用。東京情報大学学生課を経て、11年秋から同大入試・広報課に配属される。ベンチャー企業の魅力を日々PRする「なでしこ広報会」(主宰:栗田朋一・東京PRアカデミー代表)に参加。

—皆さんが携わっているお仕事は、介護とどう関わっていますか?

平野:福祉施設の顧問をしており、日々様々な相談を受けています。また制度の始まった2012年より、成年後見人として活動しています。現在は、認知症のお年寄り2名、知的障害者8名の方を担当しています。高齢化により市内でも後見人を必要とする方が年々増加し、その役割は益々大きくなってきていると感じています。利益を求めるだけでは出来ない仕事ですので、今後の担い手をどう育てていくかも重要な課題です。
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藤平:毎月お寺でサロンを開催し、地域のお年寄りが交流する場を作っています。それからお盆は、檀家さんの御宅へお邪魔しますよね。これは独居の高齢者に何か変わりがないか確認するためにも、現代においては大切なことだと考えています。今後はサロンに足を運べる元気な方だけでなく、家から出ることができない方も地域で支援する仕組みが必要だと感じています。

近本:学生より奨学金制度などの相談を受けますが、同居の祖父母の介護で親御さんが働けないケースが近年増えています。家族の認知症は誰にでも起こりうることなので、学生のうちから高齢者を知るということも必要だと痛感しています。ですので、学生のボランティア活動を支援する中で、地域の高齢者とのふれあう機会も大切にしていきたいです。

—現在、これからの高齢化社会が抱える課題と、どのように向き合っていますか?

藤平:なかなか家から出てくることが出来ない高齢者は「生きる意味」を感じられなくなっていることが少なくありません。そういった方々にも、いかに社会との接点を持ってもらうかを考え取り組んでいます。2年前から夏休みのラジオ体操を始めました。0歳の赤ちゃんから90歳のお年寄りまで、毎日50〜60人の参加があります。終了後は全員でおにぎりを食べるのですが、皆さんとても喜んでいらっしゃいます。今後は、車椅子でもできる体操や和楽の催しもしていく予定です。

平野:先日、認知症の高齢者の方がお亡くなりになりました。親族は40年も会っていなかったということで、遺骨、遺品の引き取りを拒否しました。これは決して珍しいケースではありません。こちらで永代供養をしましたが、何もしたくないけど残ったお金だけは欲しいと言うんですね。遺産ですから当然権利があるとはいえ、考えさせられます。昔と違って家族や世間との繋がり方が変わってきていますから、制度だけでなく、これからは家族や子どもの教育も大切なのではないでしょうか。

近本:核家族が進み、世代間の交流が希薄になりました。そんな中でも、祖父母と同居して育った子は、優しい気配りができる傾向がある気がします。そこで、花を通じて世代間交流の促進をする「花育」という活動を始めました。高齢者施設では、身近な草花を使ったフラワーアレンジメントを制作しています。また、若者が得意とするスマホの操作などを一緒にすることで、学生も主体的に楽しんで取り組める交流ができればと考えています。
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—未来の介護を支えるうえで、ボランティアの役割も大きくなってくると思います。スキルを活かした有償ボランティアと、奉仕の心で行う無償ボランティアの違いをどう考えますか?また、日本でなかなか有償ボランティアが根付かないのはどうしてでしょうか?

近本:質問の意図とそれてしまうかもしれませんが、まず最近は対価が発生しなければやりたがらない子が多いですよね。同じ時間を費やすのならアルバイトのほうが、と思ってしまうのかもしれません。もちろんそうでない学生も大勢いますが、ボランティアが就職活動のためのもの、となってしまっている現状があるのも否めません。しかし、ボランティアを経験することによって、人間関係を育みこれからの人生のために得られるものは大きいので、無償・有償に関わらず意義を啓蒙していきたいですね。

藤平:これは難しいですね。日本人は昔から「陰徳」を大切にしてきました。アピールしたりお金を貰ったりするのではなく、人知れず良いことをするのが美しいという考えがありますから。じつは先日も、サロン開催時に
お弁当を提供しては?という意見がありました。しかし、お寺に来るのだから参加者からお金をいただくことは難しいという話になり、そうなると誰も予算の確保ができないので結局実現はしませんでした。
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平野:僕なんかは考えが古いのかな?「定年して会社を辞めたので、ボランティアを始めた」なんて話を聞くと、働き盛りの辛いときに歯を食いしばってやってほしかった、なんて思ってしまう(笑)まぁ、それぞれ事情もあるし、割り切れない部分が多いでしょう。ただ、割り切れないところが、人生の面白さだとも思いますよ。

—これからは地域の理解やサポートも重要ですが、いま介護に限らず地域の力を感じることはありますか?

藤平:お寺は木更津市の岩根という地区にあるのですが、JR巌根駅の反対側に重城病院、重城産婦人科・小児科という地域の医療を担う病院があります。病院の向かいには、現在介護施設を建設中です。そちらの院長先生方と一緒に「岩根どっこいしょの会」というNPOを立ち上げました。地域をあげて、元気なお年寄りを、もっと元気になってもらう活動をしたいと考えています。
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平野:今だから言えるけど、初めて知的障害者の後見人となったときは、どう接すれば良いかわからず怖かった。でもね、施設に通ううちに子どもはお父さんと言って慕ってくれたり、今となっては担当できることが嬉しいと感じるようになった。また、別の施設の女子寮には25〜68歳の女性の障害者が生活しています。クリスマスパーティに行くと、最後には彼女達の大好きな「瀬戸の花嫁」を歌うの。どういうことだか分かる?歳を重ねても、障害者でも、お嫁さんになることを夢見ているんですよ。みんな社会との接点を、地域とのつながりを求めているんです。

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近本:学校にも発達障害のある学生がいます。そういった子達は、地域など外の社会と繋がる経験により、新たな可能性が開けることも多いんです。でも、残念なことに家庭では親御さんが向き合うことを逃げているというか、疲弊してしまっているケースも少なくありません。地域や学校で、何らかの受け皿が必要なのではないかと感じています。先日地域の皆さんとBBQをしたのですが、学生や卒業生の家族のみならず、近隣の方々が約200名も参加してくれました。60〜70歳の方々も大勢来てくれて、世代間の交流を楽しみにしてくれていたのです。こういう機会を増やし、大切にしていきたいですね。

—最後に、これから福祉を志す若者、地域でサポートしていく方々へメッセージをお願いします。

近本:できない理由を探すより、今できることを頑張って欲しいですね。ときには、経験することから逃げているのかな?と感じることも。そんなとき、さりげなく背中を押すことや、きっかけや機会を作ってあげるのは、私達大人の使命だと考えています。

藤平:全国でお寺はコンビニの数より多いんですよ。場所もあるし、物資もある。物事の循環の良いお寺は「場」を提供するのに最適なんです。地域の皆さんに、もっとお寺を活用してもらえればと思います。この辺りは、地域の子はうちの子という、古き良き結びつきが今でも残っています。今日この時間もうちの子ども達は、近所のおばちゃんが見てくれているんですよ。でも、若い人や転入して来られた方も増え、地域のあり方は日々変化しています。若い親子世代が地域と繋がりを持ち、学べる場を作っていきたいです。

平野:木更津市でも「市民後見人制度」が始まります。高齢者社会に向かう中で、専門職だけでは人手が足りない。我々の同業者でも、後見人をやりたくないという人もいますからね。確かに簡単なことではありません。でも、だからこそ多くの人に関わって欲しいと思います。若い人達がアクションを起こすことで、何かが変わるかもしれない。未来の可能性に期待しています。

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